*** コイツとは時たま、此処で客も居なくなった朝方、他愛もない話を肴に呑み交わ す。 半年前に拾ったこの銀髪天パは、以来上に住まわせて。 万事屋などといういかがわしい職を営んでいるようだ。 ほっとけば何も食わない生活を続けていそうなので、こうして軽い食事まで付け ている。こんなに親切な大家なんて、そういないだろう。 それを知ってか知らずか、目の前の銀髪は、酒で微かに頬を染め、カウンターに 突っ伏している。元が白いので、頬の紅が良く映える。 取り留めのない考えを紫煙と共にくゆらせて、溜め息をつく代わりに、細く長く それを吐き出した。 *細雪* 外を見やると、ちらり、ちらり。真白い雪が降っていた。そう言えば、昨夜見た 天気予報で言っていたか。 『朝方に雪が降るでしょう』、珍しく、当たったらしい。冷え込んだ部屋を暖める為に、ストーブの電源を入れる。 見やると、銀髪は未だに夢の中なようだ。薄着を見かねて、毛布を掛けてやろう と手を伸ばす。何とかは風邪を引かないとは言うけども、一応。…本当に、ここ までしてやる大家なんていない。 必然的に、肩に手が触れる。びくりと揺れたので、漸く起きたかと睨み付ける。 しかし、どうやらそうではないらしく。 突っ伏していた頭は横に反らされ、その表情が垣間見え、顔色はひどく白かった 。酒の紅は、全く消えてしまっている。 まさか悪酔いしたかと訝しむが、それもまた違うようで。 呻き声が洩れ聞こえる。普段は飄々とした…と言えば聞こえはいいが、要はフラ フラとして掴みどころのない人間だ。それこそ弱みを見せる事もなく、半年見て きて初めて、コイツのこんな表情を見た。 夢でも見ているのか、眉を顰めて。手は、何かを掴むように動く。 起こした方が良さそうだったので、声を掛ける。 「…銀時」 手を掛けようとしたら、跳ね起きた。 …普段は、そんなんじゃあ起きないくせして。 「っ……。うぁ!?」 取り敢えず、脳天にチョップをかましておいた。 「ななな何すんだいきなりよォ!?驚くじゃね―か!!」 「…、そんな事はその冷や汗拭ってから言いな」 先程までの表情は何処へやら、いつもの調子で言うヤツに煙を吐き出しながら言 うと、銀時は軽く目を見開いた。そして、首元に手をやる。少し寒いこの部屋な のに、じっとりと湿っていた。ばつの悪そうな顔。 「風呂にでも入ってきな。冷えるだろう」 「……何、珍しい。もしかして今気遣ってもらっちゃってる?」 『何も訊かないのか』と、問われた気がした。 「誰が。さっさと入ってきな、朝食でも作っといてやるから。敬え」 何事もないように、言った。 銀時は目を瞬かせると、いつものようにへらりと笑み、奥へと姿を消した。 どうした、なんて訊いても、お前は何も答えないだろう。それ位は分かる程には コイツを見てきた。 それでもいつか、コイツが弱みを見せられるような人間と出逢えればいいとは思 う。 そう思う程には、コイツは私の身内に入っているのだろう。 fin. *** わんこが私の妄想を具現化してくれた代物です。 何も言わなくてもわかると思いますがすっげぇ嬉しかったです。 何、うちの頭ん中みたん?ってぐらいドンピシャでした。お登勢さんの位置づけがまたすごくいいんですよ。 本当にありがとうございました。 |